2月号(vol.67)

「ある原因によって引き起こされる結果がある時、その原因と結果を結ぶ条件や事情のこと」、これって何だと思いますか?
複数の国語辞典を開いて『縁』という単語を私なりに調べて理解した文です。
実は英語には『縁』に相当する単語がないそうです。
日本独自の単語だなんてびっくりですね。
欧米の考えに、「良い原因があればよい結果を生み、悪い原因があれば悪い結果を生む」という思想があります。
これに当てはめてみると、日本語の縁とは原因と結果を結ぶものであると考えられます。
私の親戚のアメリカ人を思い返しても彼等の考えは比較的、原因と結果は一対一対応である様で原因が良ければ良い結果に、
そうでなければ悪い結果になるという風に考えているような気がします。
その為彼等は原因が悪い時は、可能な限りそれを排除しようとする傾向がある様に感じます。
一方、日本人の考えは異なり例え悪い原因があったにせよ、良縁によって良い結果に転じることもあると考えられる所に、我が国の良さがある様に思えます。
だからこそ私達は昔から良縁に恵まれたいと願うのではないでしょうか。
 

これ以外にも欧米人が理解し難い言葉はいくつかある様ですが、『一期一会』もその一つです。
二度と会えないかも知れないという覚悟を持って、目の前の相手に尽くすこと。とう意味ですが欧米人の考え方は、
「毎日会う相手に心を尽くすのは理解できるが、二度と会わない相手にそれ程心を尽くさなくても良いのでは?」と思う様です。
日本人と欧米人との『一期一会』に関するエピソードがあります。
私も過去にテレビで観たことがありますので、ご存知の方も多いかも知れません。
 
時は明治時代。トルコの軍艦エルトゥールル号が日本からの帰途、紀伊半島の沖で座礁した。
多くの乗組員が命を落とした中、69名のトルコ人が和歌山県の漁師等によって助けられた。
この69名がトルコに帰る際、「子孫末代まで、この御恩を語り継ぎます」と言って本当にこれを伝えていたということです。
時は流れ1995年イランイラク戦争が勃発、この時イランに多くの邦人が取り残されてしまいました。
そんな中イラクのフセイン大統領は48時間後、イラン上空を飛行する機は全て撃ち落とすという声明を出したのです。
それを知ったイランの日本大使が友人であったトルコ大使に助けを求めたところ、
トルコ政府はイラン領空を飛行していたトルコ航空のパイロットと連絡をとり日本人救助要請をした結果、
複数のパイロットがその危険なフライトを自ら志願したのです。
そのうちの2機が200数十名の日本人を乗せてイランを脱出しトルコ領空に入ったのがタイムリミット寸前だったということです。
しかもイラン国内にはまだトルコ人も残っていたというのに日本人を優先して救助してくれたのです。
助けられた日本人はなぜ危険を顧みず助けてくれたのかと質問しました。
すると、その時声を揃えて彼等が言ったのが「エルトゥールル号の恩返しです」と。
さらにその後トルコ大地震の時に日本政府は大がかりな人道支援を行ったのですが、それはイランから救助された日本人が日本政府に支援を働きかけたことで実現したものです。
これは私達日本人の一期一会が成した100年以上にわたる日本とトルコの絆以外の何ものでもないはずです。
 
私は最近ある本で「恩」という言葉を教えて頂きました。これは「感謝」に勝るものだと思います。
少しずつ年をとって「感謝する」という言葉は理解できる様になりましたが、更に年を重ねていく中で「恩を知る」ということを
意識していこうと思います。
 
院長・拝